代表:広瀬の「外務員試験ドタバタ受験記」(実話)

【思い掛けない依頼。そして受験へ】
2017年末。諸事情あって、私 は人生で初めて「投資」なるものに手を染めざるを得なくなりました。訳が分からないながらもネット証券に口座を作り、細々と資産運用を始めた矢先、とある協会様から思いがけず「証券外務員」資格試験対策のテキストの執筆依頼が舞い込みました。
「証券外務員」とは、株式などの証券を顧客に勧める仕事をする人のことで、証券会社に入社した人は、基本的に全員が取得を義務付けられます。投資家としてド素人である自分が、証券売買を投資家へ勧誘する仕事をするための資格試験向けのテキストを執筆する・・・。普通の感覚だと話が3段階くらい飛んでる感じがしますね。
でも、そろそろセミリタイアに差し掛かり、何か新しいことにチャレンジしたくてウズウズしていた私は、半ばハッタリでその執筆依頼を受けてしまいました。
執筆に先立って、協会様から「まずは自分自身が資格を取ってくれ」との指令が来ました。実にごもっともな指令ですよね(笑)。こうして私は、何十年振りかで「試験」なるものに挑むことになったのです。

【試験勉強開始!】
私が最初にとった行動は、「受験をする」という既成事実を作り、自身の退路を断つことでした。資格試験実施を取り仕切っている「プロメトリック」という機関のサイトにアクセスし、最短で約1週間先が空いているのを確認すると、ためらわずその日の受験を予約しました。これで、自分を追い込む作戦は完了です。もう、やるしかありません!
さあ、いよいよ勉強開始です。さっそく八重洲ブックセンター2階のビジネス書コーナーを訪れ、良さそうな学習書を探そうとするのですが、何しろ私は「学習者」であり「ド素人」です。本の良し悪しの判断などつく訳がありません。ただ、よくある「2週間完成」などと謳って全体を14等分してジャスト14日でやり切るようなスタイルのものは、真っ先に候補から外しました。教育業界で長く働いてきた私は、そうした「カッチリと機械のようにできたシステム」は、商品としては“売りやすい”けれども、「人間」が学ぶ上では効果的ではないという事例を、嫌という程見てきましたので。
けっきょく、外務員試験向けの本で一番売れていそうな、要するに棚の中で一番広い面積を占有している参考書&問題集を買うことにしました。
まるで、ド素人大学受験生の取る行動と同じですね。(笑)

【え?これ、無理でしょ。。。】
さて、帰りの電車でさっそく本を開いて勉強を開始したのですが、覚えるべき知識量の多さに、ただただ圧倒されるばかりです。私は生来の理系人間であり、いわゆる「暗記」は苦手、というか、人生でほとんど「覚える」というスタイルの勉強をしたことがないのです。
「こんな試験、誰が受かるんじゃい?」と思った私は、ネット情報等で外務員試験の合格率を調べました。すると、およそ半数の人が受かるということを知り、「ずいぶん率が高いな」と意外に思いました。しかし、考えてみれば受験者の多くは“ある程度”金融・経済のことを知っている人です。それで約半分なんですから、ド素人の自分が1週間で合格なんて、現実的に無理ではないのか?勉強開始初日から、暗澹たる気持ちに押し潰されそうになりました。

【暗闇の中で糸口を探す】
でも、諦めたらお終いです。合格しなければ、せっかく降って湧いてきた千載一遇のビジネスチャンスを逃すことになるのです。何か合格への糸口はないのか?でもどう考えても無理なんじゃないか?
困り果てて本のページをパラパラとめくっているるうち、第13章:「財務諸表と企業分析」で手が止まりました。なんと、「数式」がいっぱい載っているではありませんか!「こ、これならできる。。。」
私は小躍りしました。商売が数学屋さんなので、「数式」を見ただけで気持ちがす~っと落ち着くんです。(笑)
単なる知識の丸暗記ではなく、意味を理解することが正解に直結する計算問題は、やるべきことがハッキリしていて勉強の的が絞りやすいので、集中して一気に終わらせることができました。こうして、この第13章にある計算問題が一通り正答できるようになると、私の気持ちにの中に一筋の光明が差し込んできました。
勉強を進める上で、どこか一単元だけでも制覇したという「成功体験」は、学習者に大きな自信を与えてくれるものなのです。また、こうした計算問題は第6章「株式業務」や第7章「債券業務」などにもあり、配点が高くて得点差が付きやすく、重要な合否決定要因であることも知りました。

【スタイル確立?】
どうにか方針が見えてきました。なにしろたったの1週間しかないのです。本に書かれた内容を全て覚え切るのはとても不可能だと判断した私は、次のような戦略を立てました。
1.配点の高い計算問題は、完璧に理解して、満点を取る。
2.大量の知識暗記は、時間の許す範囲でほどほどにやる。
これが、後にテキスト「第0章」に書くことになった「合格への戦略」の原型です。
勉強のコツは、メリハリです。やるべき所はやり、手を抜く所は抜く。これが上手な人ほど、同じ労力・同じ時間でもより大きな成果を生み出すことができます。

【それでも残る迷い】
さて、1.計算問題に関しては、数学屋さんだけあって(笑)短期間でマスターすることができました。しかし一方の2.知識暗記は、どうしてもはかどりません。
もっと内容を整理して書かれた本はないものかと、また本屋さんに行き、良さそうに見える別の参考書を2冊ばかり買ってみたのですが、読み込んでみると最初の本と同様にまとまりがなかったり、逆にまとめてはあるのだけど全く記述内容が足りなかったりと、正に一長一短。けっきょく、ドタバタしただけで少しでも慣れている最初の本に戻ることになりました。悶々としながら。。。
ただ、幸いなことに前出の戦略には、次のような効果もありました。
1.ハリ:障子の紙がピンと張った状態 → みっちり計算問題
2.メリ:障子の紙が緩んで減り込んだ状態 → 気楽に暗記系
を交互に切替えることで精神もリフレッシュされ、最初敬遠しがちだった知識暗記系の勉強にも少しずつ身が入るようになってきたのです。
こうして、やっとどうにか学習の「スタイル」が確立し、一定の「ペース」を維持して勉強できるようになりました。勉強開始から、すでに3日ほどが経過していました。

【もう、やるしかない!】
勉強も期間の後半に差し掛かり、相変わらず相当なプレッシャーを感じ続けてはいましたが、自分の決めた道を信じ、家中を歩き回って頭掻きむしりながら参考書を読み耽り、ぶつぶつ朗読をしながら問題集を解きまくりました。
そうこうするうち、少しずつ“覚え方のコツ”のようなものがつかめてきて、「ここの説明、こう書いた方がもっとスーッと頭に入って来るのにー。」とか、「この計算問題、どう教えたらわかってもらえるかなー?」などと考えるようになりました。少し気持ちにゆとりが生まれて、合格後の執筆作業のことも考えたくなってきたのです。
まだ合格もしてないのに。職業病ですね。
こうして試験前日を迎える頃には、なんとか1.計算系は何度も反復してほぼ完璧になり、2.暗記系もそこそこ点が取れるようになっていました。問題集の模擬試験を受けてみると、得点率は80%を超えていました(合格ラインは70%)。でも決して油断はせず、合格を少しでも確実なものにするため、試験前夜は寝る時間を削ってひたすら暗記に励みました。

【運命の試験当日】
試験当日も、当然のことながら会場入りギリギリまで参考書片手にひたすら知識の詰め込み暗記です。そしていよいよ、雑居ビルのエレベーターを昇り、あるフロアーの一角にある試験場へ乗り込みました。
試験部屋に入る際には、身ぐるみ剥がされます(笑)。時計、スマホはおろか、ペン、紙、水すら持ち込み禁止です。さらに、試験中は終始監視カメラで不審な動きをしていないかと見張られています。
こうして、ついに運命の外務員試験が開始されました。試験は、私が受験した一種外務員試験の場合2時間40分の長丁場です(東大理系の数学ですら2時間30分)。
時間にはゆとりがあるので、短時間でテキパキこなすのが苦手な私にはピッタリです。
ここでも、
1.時間を掛ければ正答率の上がる計算問題に時間を割き、
2.知識問題はサクサク進めて気になるところを後で見直す
という作戦を立てました。
試験はパソコン上で行われ、問題は分野ごとにまとまった順序で出るので、一応順番通りに解答して行きましたが、とりあえず一巡目は計算系問題を確保することを重視し、気持ちに余裕ができた二巡目で知識暗記系を再考しました。時間は少し余りましたが、途中退出する勇気など当然なく、2時間40分、最後まで何度も見直しを行い、強制終了になるまで粘りました。
自分の力は遺憾なく発揮できたと思います。「やり切った」という満足感でいっぱいでした。

【サクラサク】
試験が終わると、数分後には受付窓口で結果通知の紙が渡されます。そこには、「おめでとうございます!貴殿は見事に合格されました!」などという心躍るような祝福の言葉はなく、大きくも太くもない普通の字体で
「あなたは、一種外務員資格試験を受験し、その結果、70%以上の得点であったことをお知らせします。」
という無機的な一文があるだけでした。「これって、合格っていう意味ですよね?」と、受付のおねえさんに確認したくなったくらいです(笑)。自分では9割以上行ったかな、という手応えがあったのですが、得点結果までは教えてくれないようでした。
   ~~猛勉強の甲斐あって、初老のオヤジに、サクラサク。~~
疲れました。しかしそれは、受験生時代に感じていた、あの心地よい疲労感です。
何十年も、人が合格する悦びを脇から見てばかりいたのですが、“自分が”受かる喜びっていうものを久々に感じました。この達成感。。。実に新鮮です。
さっそく、大人気もなく喜び勇んで結果通知の写真を撮り、知人へラインで送信しました。「70%以上の得点」の字が読み取れる大きさで。

【どんだけ勉強したんだっ!!】
受験を決意してから1週間、これほどまで「覚える」ということに没頭したのは、共通一次試験直前の1週間で「倫社・政経」を詰込み暗記したとき以来です。1週間毎日、(“不眠”ではないですが)不休で、起きてる時間は試験勉強だけに没頭しました。(予備校講師は季節労働者なので、休閑記には時間の融通が効くんです。)
総学習時間数は
17時間×7日 ≒ 120時間
に及んでいると思います。
1週間という「期間」は、合格者の中でも短い方だと思いますが、費やした「時間」は、おそらく合格者の平均をかなり上回っているのではないかと想像します。ただ、この長時間の中には、“道草”に費やされてしまった部分もかなり含まれています。(実は・・・優に半分以上・・・)
本の記述内容がどうしても釈然とせず、試験の得点にさして影響がないとわかっていながら、止むに止まれず疑問個所を延々とネットなどで調べたりしていたのです。もちろん、「わかんないけどまーいーや」とスルーした個所もありますが、「ここぞ」という要所については、疑問が解消されないと、それが気に掛かって気に掛かって勉強が前に進まなくなるんです。根っからの理系人間の特性です。(こういうタイプの人は、この試験に向いているとは言いにくいです。。。)あと、合格した後で自分が書かねばならないといこともあって、非能率的であるとわかっていながら突き詰めて調べてしまったという事情もありますが。
お世話になっておきながら申し訳ないのですが、私の使用した参考書・問題集の記述がもう少し受験者の立場を思いやったものであれば、私が学習に要した時間は劇的に減っていたはずです。おそらく3分の1で済んだでしょう(苦笑)。

【“書き手”としての決意】
そこで、私は次のように意を決しました。
   「自分が書く本の読者には、絶対にこんな思いはさせない!」
こうして私は、与えられたビジネスチャンスの第1ハードルを命からがらクリアーしました。
そして、自分の「ドタバタ受験体験」の印象が鮮明なうちに参考書&問題集を書き、また勉強の過程を通して得た学習戦略を伝授すれば、そおらく多くの受験者は自分の何分の一かの苦労で試験に合格できるはずだと考えました。

こんな風にして、投資の「ト」の字に手を染めてから3カ月、私の外務員試験テキスト&問題集の執筆作業が始まりました。

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